ハンガリーでの観光最終日は、まずは国会議事堂を見学した。
国会議事堂の見学はガイドツアーのみになっていて、個人で訪れても一日に何度か指定されているガイドツアーに参加しないと見学出来ないようになっている。
ガイドブックによると午前中10時からと言うのが最初のガイドツアーになっていたが、我々は団体で見学の予約をしていて、その時間が午前8時45分頃からになっていた。
添乗員のSさんによると、予約時間は厳守で参加人数等の予約内容が実際と違っていると見学が出来なくなると言うことで、念には念を入れると言うことで、ホテルは早目の8時過ぎに出発した。
国会議事堂はホテルがある王宮の丘から見えていたので、行くのにそれほど時間はかからないと思っていたが、議事堂前のコシュート・ラヨシュ広場には15分ほどで到着した。
その広場に面して建っている建物の柱には無数の銃弾の跡が記してあった。
それは1956年10月に起こった「ハンガリー動乱」の際にソ連軍が発した銃撃の跡と言うことだった。
ハンガリー動乱と言う事件については小学生か中学生の頃だったか、テレビドラマの中でその言葉を聞いたことがあるくらいで詳しいことは知らなかったが、それは第二次世界大戦後ソ連を中心とした共産圏の国の中で盟主であるソ連が同盟国に戦車等で乗り込んで市民を制圧したと言う事件で、その傷跡が今もそうやって国会議事堂前の建物に残されているのは、ハンガリー国民がその事件を忘れないためと言うこともあるんだろう。
同じく戦後共産圏の国だったチェコやポーランドでも同じようなことが起こっているから、戦後の東西冷戦とは一体何だったのかと改めて考えさせられてしまう。
それにしても生々しい傷跡だ。
さて、その建物の前には国会議事堂が建っていた。
また、銃弾の跡があった建物の並びで国会議事堂の向かいには、最高裁判所が建っていた。
この建物は、国会議事堂を建てる際に行われたデザインのコンペで2位になったものだと言う。
国会議事堂は今までブダ地区側から何度も目にしていたし、前夜のクルーズでも見事にライトアップされているところを見たが、これらの姿は言わば国会議事堂を裏側から見たもので、表側はこちら側だと聞いて、あ、そうなの?とちょっと意外な感じがした。
有名な景色は裏側だったと言うことなのだ。
さてそれで観光用の入口はその表側ではなく裏側でもなく、脇にあって、そこから入るようになっていた。
入口では空港で行われるのと同じセキュリティチェックを受けて中に入った。
そしてその際パスポートのチェックが抜き打ちで行われることがあるのでパスポートのコピーを用意しておくように事前に言われてたが、そのチェックは行われなかった。
添乗員のSさんによると、「抜き打ちである」と言われているが今まで一度もチェックを受けたことはないとのことだった。
ま、念には念を入れてと言うことなんだろう。
待つことしばし、その後予約していた時間になったので国会議事堂の見学が始まった。
内部のガイドは我々のガイドのエヴァさんが行ったが、前後に国会議事堂の係りの人が同行していた。
やはり見学出来るといってもそこは国会議事堂と言うことで、セキュリティはしっかりと行っていると言うことなんだろう。
見学出来たのは多分中央のドームに向かう通路とそのドームの辺りと議会会議場だった。
通路には壁際に半円形を連ねた金属製の台が設置されていたが、それは議員が吸っている葉巻を置く場所で灰皿と言うことだった。
多分中央のドームの辺りだろうが、天井にはフレスコ画が描かれ壁、階段、通路がほとんど金色に輝き床には赤い絨毯が敷かれていて、正に眼がくらむようだった。
そしてそのドームの下には、初代イシュトヴァーンが戴冠した1000年からハンガリー王国最後の王カーロイ4世が1948年に退位するまでの間王から王へと代々引き継がれて来た、あの「王冠」が安置されていた。
王宮の丘にあるマーチャーシュ教会の中ではそのレプリカを見たが、その本物がそこにはあったのだ。
だが、その本物の王冠の周りには衛兵がいて、一定の場所よりその先は近づけないようになっていた。
そのため、正直なところ、遠いのとその部分の照明が暗かったので、今一つよく見えなかったと言うのが実情だった。
(我々が訪れた時は、ちょうど衛兵の交代が行われていた。)
しかも、王冠の写真を撮影することは禁止されていた。
以前はノーフラッシュで撮影が出来たと言うことだが、フラッシュで撮影する人がいたために撮影自体禁止されてしまったと言うのだ。
何とも残念だ。
以前、フランスのルーブル美術館でモナリザを見た時もノーフラッシュならカメラ撮影OKだと言うのにバシバシフラッシュ撮影する人が何人もいて、その都度係員に注意されていたが、あんなことを続けていたらそのうちカメラ撮影自体禁止になってしまうだろうと思った。
まぁ、どこでもその手の人はいるだろう。
それと、デジカメの操作がよくわからずに、ノーフラッシュに切り替えられずそのままフラッシュ撮影していると言う人もいるようだからそれはそれで困ったものだ。
その後は会議場に向かった。
この国会議事堂は外から見ると恐らく左右対称になっていて、会議場も左右一対になっているように見えるが現在のハンガリーの議会は一院制なので、全ての会議はここで行われると言う。
左右一対に見えるのは、以前は上院、下院の二院制だったためと言うことだった。
それにしてもこの会議場の造りも見事だった。
と言うことで、国会議事堂の見学は45分ほどで終わった。
・・・
以下、続く・・・。