今日の午後、緩やかな長い登り坂を歩いて行くと、その先は境木と言う名前が表示されている交差点になっていた。
その交差点は区界になっていて、その角にはスィートと言う名前の歯科医院が建っていた。
この歯科医院、その前を通る度に、(歯科に「甘い」って名前って、どうなの?)と思うが、そこそこ患者があるようだ。
そして一汗かきながらその交差点に差し掛かると、私の前でぷらぷらと歩きながらズボンのポケットに手を入れたか出したかしていた高齢の男性のそのポケットからひらひらと名刺大の白い紙が流れ落ちたのが見えた。
その男性はそのことに全く気が付かないようで、目の前の歩道の信号が青になるのを待っていた。
その様子を見て、一瞬その男性に声を掛けようかと思った。
が、その時歩道上に落ちた紙が、もしかしたらその男性にとっては全く必要がなかったものなら、声を掛けて返って迷惑になるかもしれないと思った。
例えば、ゴミ、と言うか、無くしても困らないもの、または敢えて知らんぷりしてゴミを捨てたのかもしれない。
時々歩いていて、レシートとか紙くずを捨てる人を見る。
そんなことだったら、声を掛けたら面倒なことになりそうだ。
このご時世、いろいろと面倒だ。
変な人もいる。
見も知らない人のことだから、そのまま放っておいて通り過ぎたって誰に責められることではないだろう。
・・・
そんなことが頭の中を巡っているうちにその男性との距離が近づいた。
それで一応、その男性の後方2mくらいの位置の歩道の上にある白い名刺大の紙を覗き込んだ。
すると、、
そこには縦・横の線で格子の枠が書かれていて、その一部に斜めの線も引かれているのが見えた。
それを見た瞬間、それが「診察券」ではないかと思った。
私が通う医院でも同じような印刷が裏面にしてあって、斜めの線のところに次回の予約日を書き込むようになっていたからだ。
そう思ったので、その高齢の男性に後ろから声を掛けた。
「あの~、、、落ちましたよ。」
と言いながら、その白い名刺大の紙がある位置を指した。
するとその男性、すぐに振り返って、
「あ・・・」
と言いながら、その紙を拾おうとそこまで歩み寄って行った。
・・・
その後のことはどうなったかわからないが、取り敢えずは変な人ではなさそうだったので、声を掛けてよかったようだった。^_^;