第一日目:その3
田沢湖駅で約40分ほど待った後、羽後交通のバスがやって来た。
そのバスに乗り込んで待つこと数分。 定刻の午後4時15分になったので、ドアが閉まってバスが動き出すと、数メートル先からバスの方に向って大わらわの様子で
大きなスーツケースを引っ張って近づいてくる20代後半くらいと思しき女性の姿があった。(バスの真ん前、画像で言うと、画面の右から左へ向かって・・・)
そしてその様子から、明らかに、このバスに乗り込もうとしているのが見ていてわかった。
そう言えば、バスが出発する数分前に駅に入線して来た車両があったような気がした。(画像に、その列車が写っている。)
その女性はあの列車に乗っていたのかもしれない。
海外旅行にでも行く時に使うような大きなスーツケースを引きながら動き始めたバスに近づいて来たその女性をどうするのか?と思っていると、運転手はその場でバスを停めて前のドアを開けた。
ドアが開いたのを見てその女性はほっとした様子でバスに乗り込んで来た。
しかし、スーツケースが大きくて、なかなか持ち上げてバスに乗り込もうとするのが大変な様子だった。
そして、「すみません、、、ありがとうございます」と礼を言いながらバスに乗り込むと、半分以上空席のある車内の比較的前の方の席に座ったようだった。
その後バスは再び動き始めたが、その女性、整理券を取っていなかったので、動き出したバスの中を歩いて運転席の横に来て「整理券を取ってなかった・・・」と言って、整理券の発券機のところに手を向けたが、バスが動き始めると整理券は出ないようになっていたらしい。
それで少し困ったようにしていたが、運転手が「始発からだから整理券がなくても大丈夫です」と言ったのを聞いて安心したように自分の席に戻って行った。
その会話の様子を聞いていて、
もしかしてその女性、日本人ではないのかも?と思った。 会話の言葉が少したどたどしかったのだ。
そんな様子を見ていて、(もしかして、我らが田沢湖駅に着いた時も頑張って走っていれば、バスに乗れたかも?)と一瞬思ったが、足腰の弱い父が一緒だったので、(やっぱ、無理だったかな・・・)と思い直した。
その後、バスは順調に走って途中田沢湖湖畔へと出た。
その前のバス停で、先ほどの若い女性が一人降りて行った。
降りる際、周りの乗客にスーツケースをおろすのを手伝ってもらいながら、漸く降りて行ったが、その際近くでよく見ると、彼女は首から身分証明証のようなカードをぶら下げていた。
「ありがとうございました」と言って降りて行った彼女。
バスが動き始めてもその場でバスに向って暫く笑顔で手を振っていたが、もしかして彼女は、アジアのどこかの国のツアーの添乗員だったのかもしれないと思った。
ツアー客が既に田沢湖近辺のその辺りに到着していて、何かの理由で彼女だけ後から到着した、、、そんなことなのかな?と思って彼女の姿が小さくなるのを見ていた。
再び走り始めたバスは、その後いくつかの停留所に停まった後
「水沢温泉郷」と言うバス停に停まった。
(ほぉ~、、、乳頭温泉郷に行く前に、その他にも温泉郷があるんだ、、、知らなかったぁ~
田沢湖から先、乳頭温泉郷とは別の方角に進むと
「玉川温泉」と言う有名な温泉もあるらしいから、この辺りは温泉がたくさんあるところなんだろう。
そうこうしているうちに、バスはほぼ定刻通り、
午後5時過ぎに終点の「乳頭温泉」に到着した。
この日宿泊する
「黒湯温泉」は、この
乳頭温泉郷の一番奥にある温泉宿で、バス停から歩いて行くと15分から20分くらいかかるらしい。
時間的にもひとりだったら歩いて行くところだったが、そんな距離、父は歩ける身体ではないので、田沢湖駅前から予め宿に電話をしておいて、バス停から車で運んでもらうことにしておいた。
と言うことで、終点の「乳頭温泉」に着くと、
バス停の横に「黒湯温泉」と書かれたマイクロバスが待っていてくれた。
それで、早速そのマイクロバスに乗り込むと、他には乗りこんで来る客はいなかったので、我ら父子だけを乗せて、黒湯温泉に向かって走り出した。
宿に向かうには今来た道を少し戻り、
「大釜温泉」 「妙乃湯」と言う乳頭温泉郷の中の温泉宿の前を通ってキャンプ場の前から山の中の脇道に入って行った。
(これなら、わざわざ終点まで行かずに、途中のバス停の「キャンプ場前」や「妙乃湯」で待っていてくれた方が早いのになぁ~)と思った。
まぁ、マイクロバスを停車させておく場所の問題なんだろう、、、と一人で合点した。
そして、車一台が通れる道を走って(途中、退避場が何箇所あるくらい、すれ違うことが難しいくらいの道だった)、数分進んでいくと、広い駐車場に着いた。
その駐車場には、結構たくさんの車が停まっていた。