第四日目:その1
三泊四日の北東北の旅も最終日を迎えた7月24日の朝は、突然
父の声で目が覚めた。
「ちょっと起きてくれるか・・・」。
時計を見ると、まだ6時半だった。
(こんな時間に一体何事だ?)と思っていると、
「夜中、すごかったな」と言う。
「え? 夜中に何かあったの?」と聞くと、
「地震があったじゃないか・・・」と父は答えた。
全く気付かなかった。
(そんなに揺れた地震があったんだ・・・。)
と思っていると、
「それはそうと、
ちょっと話があるんだ、、、いいか?」と父が話を切り出した。
それで布団から起き上がって、窓の傍にある椅子に父と向き合って座ると、父が「昨日の霧の中での運転、疲れただろ? だから今日はもう下北の方を周るのは止めにして、帰ろう」と言って来た。
最終日のこの日は、車で下北半島に向かって走り、
恐山や
大間崎を訪れたり、時間があれば
仏が浦の
遊覧船に乗ろうと計画をしていた。
その予定を全てキャンセルして、八戸から新幹線に乗って帰ろうと言う。
確かに、昨日は霧の中のドライブで、いつもよりは神経を使って運転した分疲れはしたが、それほどでもなかった。
それよりも、運転席の隣りにいた父がかなり疲れているようだった。
なので、父がそう言うなら無理してドライブを続けるのもよくないと思って、急遽予定を変更して、
直接八戸駅へ向かうことにした。
それはそうと、父と話をしているうちに父がさっき話をしていた「地震」のことが気になって来た。
そう言えば、夢の中で何だか空間が大きく歪むような体験をした感覚があったが、もしかすると、その時地震があったのかもしれないと思った。
そして、携帯電話を見るとメールの着信があったことを知らせるランプが点灯していたので早速チェックすると、そのメールは横浜の自宅にいる妹からのものだった。
「地震、大丈夫?」と簡単な内容だったが、その
着信時間が夜中の1時1分だった。
(え? これって横浜でも揺れたってこと?)
と思ったら、もしかして大地震だったのかもしれない、、、と、この時になって初めてことの重大さを認識した。
そして、この旅に来てから初めてテレビを付けると、朝のニュースをやっていて、昨夜深夜に
東北地方を中心に最大震度6強の地震があったことを報じていた。
そして、これから向かうことにした八戸も震度6弱とのことで、新幹線、在来線も動いていないと言うことだった。
特に
新幹線は保守点検をしているために、午前中は動かないと報じていた。
そんなニュースを見ていても、(それなら、午後からは動くんだろう)と軽く考えていた。
宿泊していた青森市内も震度5弱と言うことで、今までにそんなに大きな揺れを体験したことがなかったが、幸か不幸か深夜のことでその揺れをはっきりとは認識していなかった。
そのため、この大地震のことを軽く考えてしまったのかもしれなかった。
・・・
温泉旅館や温泉宿に泊まった時は、ほとんどの場合朝風呂に入るものだが、どうもこの日の朝は風呂に入ると言う気持ちにはなれなかった。
と言うより、「せっかくだから朝も温泉に入って行こう!」と言う意欲がわかなかった。
どうも、昨晩大風呂とそれに続く露天風呂に入って来たが、どうも今一、、、と言う感じがしてならなかったからかもしれない。
まぁ~、無理に入ることもないか、、、
と言うことで、昨日指定しておいた朝食の時間が迫って来たので、朝食を摂ることにした。
朝食は2階の大広間で摂るようになっていたが、大広間に行くと、やはり他の客からも大地震のことを話題にしている声が聞こえて来た。
しかし、浅虫温泉のある青森市内が震度5弱と言う結構な揺れを受けたにも関わらず、ホテルの係りの人達が地震の影響など全く関係ないと言った感じで仕事をしている姿にはいささか驚いてしまった。
また、このホテルが地震の影響を受けてないと言うような印象もちょっと不思議だった。
後からわかったことだが、今回の地震は震度の大きさの割には被害が意外に少なかったようだった。
のんびりと、約1時間ほど時間を掛けて朝食を摂り終えると、部屋に戻って出発の準備をした。
そしてチェックアウトを済ませて、ホテル秋田屋を出ることにした。
車に乗り込んでナビの目的地に「JR八戸駅」をセットすると、後はJR八戸駅へ向かって一直線!
いやぁ~~、
ナビは便利だ!(^.^)